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アフリカでの活動 |
CanDoは1998年から実施してきたケニアでの活動を展開するために、2015年に南部アフリカのマラウイ共和国において調査を始めました。 2018年4月から日本人スタッフが駐在して事務所開設と活動の準備を進め、2019年1月に南部のパロンベ県で初等学校における活動を開始しました。 |
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マラウイ共和国に関わる理由とパロンベ県のこと |
マラウイ共和国は一人当たりの国民総所得(GNI)が550米ドル(2019年)の貧困国です。2015年までの「万人のための教育(EFA)」運動の展開で、初等学校(8年制)に入学する子どもは大幅に増加しましたが、中途退学する生徒が多く、EFAの達成度は低い状況です。 パロンベ県は、南部にあるマラウイの産業経済の中心地、ブランタイヤ市から東へ約90キロにあります。県の人口は約43万人(2018年)。初等学校を修了していない成人人口比率は84.9%(全国70.0%)で全国1です。2022年度の初等学校の在籍数は145,205人で、うち1年生は25,394人、8年生は12,265人。 多くの子どもが初等教育を修了できない要因には、貧困のために通わせられないこと、労働力としての期待、早期の結婚、教育環境や教材が不十分なこと、教員の課題、などさまざまな問題があります。マラウイではチェワ語と英語が公用語で、初等学校の5年生からは授業の使用言語は英語となっていることも中退の原因とみられます。 中でも、教室の不足は深刻です。1教室あたりの生徒数は、政府が推奨する60人をはるかに超える147人となっています。低学年の恒久教室では、机やいすを入れられず、床に座って、肩がつくほど詰め合って授業を受けるのが一般的です。屋外や草ぶきの仮設の教室での授業も多く見られ、降雨時には授業ができず、家に帰ることになります。高学年になって生徒数が減少することで、教室に机やいすの配置が可能になります。 |
初等学校における教室建設 |
当会は、ケニアでの取り組みと同じく、保護者参加による教室建設を目指しました。外務省日本NGO連携無償資金協力により、2019年1月、最初に保護者の参加意識を高めるための活動を1年の計画で始めました。 パロンベ県の9つの教育区の各2校計18校を候補校として、関係機関と協働で一般保護者を対象とした研修を3回実施。次に学校が選んだ建設リーダー候補50人に6回の研修を実施し、建設リーダーを育成しました。そして、実践として土壌安定化レンガ(SSB)を使用した倉庫を建設。環境保全の観点から、公共施設の建設では焼成レンガの使用は禁止され、県はセメント、土、砂を混ぜて圧縮するSSBを推奨。同年12月に開始して、事業期間を約2か月延長した2020年3月末までに12校、5月に13校目が完成しました。 けれども、コロナ禍の影響で、2020年には次の段階の教室建設には進めませんでした。 2021年2月、外務省日本NGO連携無償資金協力による教室建設事業を2年計画で開始しました。1教室棟(2教室と2小部屋)を2校、1教室を7校、計9校を対象とします。倉庫を建設した13校を保護者の参加度の評価から、優先候補校9校、補欠4校に分けました。建設リーダー30人が参加することが建設の条件になります。前者の8校、後者の1校で進めました。 1教室は9,000個のSSBを積み上げて造ります(教室棟では18,900個)。建設リーダーがSSB作成の計画を立てて、中心になって製作を進めます。2021年度に4校、2022年度は1校で製作が完了しました。 最初に完了した2校が教室棟建設の対象になります。2022年度は2教室の壁・屋根建設を同時に進めました。1教室を建設する他の3校では、基礎・床建設を完了後、壁・屋根建設に進みました。2022年12月に最初に1教室が完成しました。 対象となる9校の残り4校のうち1校は、SSB製作の初期段階で活動が止まり、セメントを他校に譲渡して途中終了しました。3校は2022年10月にSSB5,000個を使用する、小規模教室の建設に変更しました。そのうち1校は一般保護者と建設リーダーが建設開始に同意せず、セメントとSSBを他校に譲渡して途中終了しました。 事業期間を2023年3月31日までに変更していましたが、3月に発生したサイクロン・フレディによる被害のため6月30日までに再度延長しました。 7校(6教育区)で教室棟2校、1教室3校、小規模教室2校の建設が完了しました。 |
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初等学校における保健活動 |
中途退学する理由として、高学年では、女子の場合は家事、生理、妊娠、男子の場合は、畑仕事、出稼ぎ、どちらも早期結婚、学習の遅れ、といろいろあります。大人のHIV陽性率は15.5%(全国8.8%)なので、学校にはHIV/エイズの問題もあり、陽性、あるいは影響を受けた子どもがいます。 2019年、公益財団法人日本国際協力財団の国際協力NPO助成により、保護者が子どもの成長と健康、性の課題に関する知識を身に付ける研修を実施する取り組みを開始しました。県教育局長から推薦された、ムロンバ教育区(10校)を対象としました。同年、教育官と研修の内容について協議して、リーダーへの概要の研修、および母親会委員を対象とした5テーマの研修の実施に合意しました。 2020年、コロナ禍のため、2022年3月末まで事業期間の延長が承認されました(その後、2022年12月まで延長)。2021年、保健専門家が研修の手順書についてほぼ完成させましたが、全体を俯瞰してまとめる段階には至らなかったので、リーダーへの概要の研修は中止しました。11月になって、保健局が積極的に協働を希望したので、研修の構成を再検討することにしました。 2022年2月、県教育局を主に、県保健局環境保健官(公衆衛生部門)が講師派遣に協力して、ムロンバ教育区で5テーマの研修を実施しました―衛生・水・栄養/子どもの保護/子どもの発達/HIV/AIDS/リプロダクティブ・ヘルス。行政官が講師となり、初等学校の母親会委員(各校5名)と学校保健担当教員、各校を担当する保健助手が受講しました。 3月、研修を修了した保健リーダーが、一般の保護者を対象に学習会を開催。全10校で各1回ずつ開き、のべ509人の保護者が参加しました。監督する行政官が参加して助言をしました。 6月、教育官からは母親会委員の活動を支援するため、ライフスキル教育の活用の提案がありました。活動手法について県保健局と合意ができないため、教育局のみとの協働で展開する提案を県知事が同意。12月、6年生と7年生のライフスキル教科から6単元を選び、英語からチェワ語に翻訳。ムロンバ教育区教育官が講師となって、各校7人、計70人に研修を実施しました。 ライフスキルは初等学校の2年生から8年生までが学ぶ科目で、「個々人が、日常生活の中で生じるさまざまな問題や要求に対して、効果的に対処できるようになる能力」とマラウイ教育省は定義しています。1996年にエイズ問題に対処する取り組みとして4年生に試験導入され、2001年から2年~8年生までの試験対象外科目、2007年のカリキュラム改訂で主要科目になりました。 |
初等学校におけるライフスキル教育を基盤とした子どもの教育と健康・安全を保障する活動形成―ライフスキル事業 |
2023年、当会はライフスキル事業を広く展開することを目指しました。独立行政法人国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業(パートナー型)として実施するための枠組みについて、7月にパロンベ県知事、教育局長と協議。9月、JICAマラウイとパロンベ県知事が事業の合意書に署名しました(当会と県教育局長が証人署名)。 父母リーダーへの研修とその後の活動形成、および教員への研修を行ないます。そして、父母リーダーや教員による実践活動を促します。保護者と教員が、同じ視点・手法を共有することで、子どもの課題に協力して取り組みやすくなります。 同年12月1日、JICAと当会は業務委託契約を締結しました。事業期間は3年間で、4教育区を対象とします。前半の1年半は、モザンビーク国境に近いナゾンベ教育区(11校)とクランベ教育区(12校)が対象となります(後半はミテケテ教育区とコンゴロニ教育区)。 ■父母リーダーの育成 事前調査のあと合意形成を行ないます。校?に手当・軽食なしでの関係者会議の招集を依頼します。各校へは教科書(各学年33冊)、教員ガイド(各学年3冊)を供与。父母リーダー候補の選定は学校側に一任。各校で10名を選抜してもらい、活動への参加意欲を確認します。 父母リーダーには、「ライフスキル」の教科書を活用した、全12回の集合研修を行ないます。それぞれの知識を理解するとともに、、他者にわかりやすく伝える手法を身につけることを目的としています。2024年8月にナゾンベ教育区とクランベ教育区で完了しました(出席率は97%)。 12回の内容は、教育―初等教育の意義/ライフスキル―意思決定と平和的な対立解決/保健・医療―子どもの成?と健康、感染症予防、エイズ問題、プライマリヘルスケア/社会福祉―子どもの保護、権利、虐待や性被害・加害の予防、脆弱な人たち、早期結婚や性交渉の予防/災害リスク管理―洪水被害への準備です。防災は2023年3月、サイクロン・フレディで深刻な被害を受けたことからテーマに加えました。 講師は各分野の行政官が担当します。研修の手順書は県専門行政官、教員開発センター助手、当会で作成。配布する資料は、ライフスキル演習(英語とチェワ語)とチェワ語の手順書です。 パロンベ県では1日あたりの大人の食事の回数が1回もしくは2回が約8割です(2020年、統合家庭調査)。朝食をとっていない人が研修に集中するために、「エネルギーの供給(Input of Energy)」としてビスケットとフルーツ・ジュースを供与します(軽食や飲み物を指す「Refreshment」という表現は使いません)。研修の参加者には交通費の実費を携帯電話での資金決済を利用して支給します。 ■父母リーダーによる一般保護者向け学習会の開催 研修を修了したリーダーには、学習会を開催して一般の保護者に学んだ課題と対処の視点や方法を伝えることを期待しています。学習会には、当会が補助教材を必要な数を印刷して持ち込みます。2024年5月末に最初の学習会が開催されましたが、その後は低調で、またリーダーは繰り返し行なうことの困難を抱えているこが分かりました。フォローアップ会議を開き、取り組みについて再検討しました。 ■父母リーダーによる学校活動の実践 当会がリーダーにもうひとつ期待していることは、学校が抱えている課題解決のための活動の実践です。各校には100米ドルまでの資機材を供与します。リーダーは課題をあげ、状況を改善する計画と2つの活動案を作って、保護者、校長、村長が参加する会議で提示します。話し合ってうち一つの活動を選びます。 ナゾンベ教育区とクランベ教育区の学校では、教室の床やドアの補修、机修理、生理ナプキン交換室つきのトイレの補修、小用トイレ(男子用・女子用)の建設、夜間自習用の電線と電灯の設置、太陽光発電パネルと電灯の購入、校内の配水管の延?、教員住宅の床建設に学校で取り組んでいます。 |
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■教員研修 実施前のベースライン調査、および校長、教員との合意形成のため、ライフスキル授業を観察し、生徒と教員からの聞き取りを行ないました。 各校5名ずつのライフスキル教員に教育区ごとに集合研修を行ないます。そして、ライフスキル授業の改善、教員と父母リーダーとの協働関係の構築と子どもの課題への取り組みを促します。ライフスキル教員には、父母リーダーによる学校活動とは別に、100米ドルまでの資機材を供与します。 ■父母リーダーによる村人向け学習会の開催 父母リーダーは保護者向けとは別に、地域の村長に働きかけ、村人向けの学習会を開催します。これは村?が村人を招集して、父母リーダーが発表します。扱われる内容に馴染みがない村人にとっては、チェワ語で作成され、絵などもある配布物を手元において、父母リーダーの発表を聞くことで、内容への理解が促進されているようです。 |
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★参考―ケニアにおけるライフスキルの類型 出典: Ministry of Education, Primary Life Skills Education Teachers’ Handbook, Kenya Institute of Education, 2008 (永岡による仮訳) ●自己を知り生きるためのスキル 自己認識、自己尊重、感情への対処、ストレスへの対処 ●他者を知り共に生きるためのスキル 共感、効果的なコミュニケーション、交渉、非暴力による対立の解決、自己主張、友だちづくりのスキル、仲間からの圧力への対抗 ●効果的な判断のためのスキル 創造的思考、批判的思考、課題解決スキル |
ケニアでの活動> |
2025年4月25日 更新 |